『母』 (文:藤本 森(しん))
- 京都生涯学習カレッジ

- 1月31日
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(2025年1月31日配信ハッピーメール)

先月の深夜、救急車で運ばれた母の病状説明を受けるため、母が入院している病院に行く。 隣の市にある病院までバスを乗り継ぎ、1時間かけてようやく到着。太ももすら見る影もなく痩せ細り、同じように血管と皮膚だけの腕に点滴の針が固定されている。 脂肪も筋肉も失われた腕に巡る血管に、きっとうまく針が刺さらないんだろう、あちこち痛々しい内出血だらけ。 そして鼻には酸素のチューブが装着されている。入院してから意思疎通もままならなかったのだけれど、「えらい(しんどいの意)?」と聞くと、床ずれ防止のために横向きになったまま、微かに頷いた。あっ!頷いた!え?私の言ってることが分かった?ドキドキしながらもう一度聞いた。 「えらい?」もう一度母はこっくりと頷いた。頷いた!瞬間、安堵の思いが溢れる‥。 ‥ただ、‥それっきり‥、ただただ時間だけが過ぎていった。母は、あと数日で97歳になる。 誕生日には弟と一緒に、母が大好きなアイスクリームを持って行く。 だけど、もう少し生きていて欲しいという思いと、辛いならば、それは望みたくない思いが日々広がっていく。‥ その日、朝日は何度確認しても、東の空に菱形に輝いていた。 母が誕生した日は『節分』だった。 そして今年、その日は『立春』。 藤本 森(しん) |




















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