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『日本、美のるつぼ』で再発見する日本の魂(文:木村さちこ)

更新日:2 日前

(2025年5月22日配信ハッピーメール)





  京都国立博物館で開催中の特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」に行ってきました。

 

タイトル通り、日本の美術が「るつぼ=さまざまな文化の融合」によって形づくられてきたことを、時代や分野を超えた国宝や重要文化財の作品たちが語ってくれます。けれどその魅力は、歴史的価値や格式だけにとどまらず、観ていて「思わずクスッと笑ってしまうような古代の人たちの感性を身近に感じるところでした。

 

国宝『風神雷神図屏風』。金屏風に迫力あるお姿に圧巻しているとよく見ると風神・雷神がなんと「でべそ」!「ああ、昔の人たちも楽しみながら描いていたのね~。」と娘の視点に頭でっかちで見ていた私はぐっと親しみが湧きました。

 

仏像の展示では、静かな佇まいの中に衝撃が。なんと、頭部がぱっくり割れて中から別の顔が飛び出してくる造形に出会い、思わず「なぜ!?」と声が出そうに。祈りの対象としてだけでなく、視覚的な驚きで信仰を伝える力にも圧倒されます。

 

そして、古墳時代の展示では、王の墓から三種の神器が出土したという一節に思わず胸が熱くなりました。書物でしか知らなかった“神話”が、実在の歴史と重なり、まるで時空を超えて過去が今につながってくるような感覚。

 

また、重要文化財の『輝変天目』。綺麗な茶碗を眺めながら「これでお抹茶を飲んだら、きっと格別だろうなあ…」と想像。器の美しさに、触れてみたい・使ってみたいという気持ちが湧いてきました。美術品は“飾るもの”ではなく、“使われていたもの”だったのだと改めて実感します。

 

印象的だったのは、各作品に添えられた学芸員の方々のキャプションのセンスです。「今の感覚で言えば、こんな感じかもしれません」といった、わかりやすくも親しみのある解説が、とても印象的でした。古の美術品が、難しく遠い存在ではなく、“暮らしの延長”に感じられる瞬間です。

 

「日本美術は、外からの文化を受け入れながら、自分たちの感性で育んできた」──その言葉が、展示全体を通して腑に落ちました。この国に生きる私たち日本人は、実はずっと“融合”を大切にしてきたのだと、静かに教えてくれる展覧会です。

美術は、知識や教養のためだけにあるのではなく、「今ここに生きる私たち」と「いにしえに生きた人たち」の魂をつなげてくれるもの。「美のるつぼ」で出会った数々の瞬間は、そんな日本の魂の在り方を、やさしく、そして力強く語りかけてくれていたように思います。

 

「どんな“るつぼ”の中に、今を生きていますか?」そんな問いを、心の中にそっと残してくれる展覧会でした。

 

木村さちこ


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